「超現場主義」のリアリスト
ノンノ中込新編集長は
源氏物語の舞台を巡礼中

毎回好評を博している『新編集長インタビュー』。今回はノンノ新編集長に就任した中込直子の登場です。

2002年に入社。LEEに11年、その後SPURとノンノでファッション担当としてキャリアを積んできました。


編集者を目指したのは、中学生の時に小説を書いた経験から。

「昔から本や雑誌が大好きで、中学生の頃に400字詰め原稿用紙300枚ほどのライトノベルのようなものを書き上げたんです。ただ冷静になって読み返すと、『この設定はあの漫画に似ているな』とか、どこかで見たものの真似事のようにも思えてきて。そして高校生くらいになると自分の創作能力の限界を感じるようになり『クリエイターには向いてないな』と感じ始めたころ、『編集者』というコンテンツを一緒につくりあげる職種があることを知りました。それが編集者を目指したきっかけです」

中込編集長と言えば「徹底した現場主義」が強み。LEE時代に全国に赴いた「おしゃれスナップ」でその大切さに気が付いたそうです。

「もう15年以上前になりますが、LEEのスナップで撮影する方の全国的な嗜好の傾向というのはもちろんあります。でもたとえば『ベレー帽かぶっている率が高いな』とか『みんなオーロラシューズ履いているな』とか。そういう局地的な流行は、やっぱり行ってみて初めてわかるんです」

ノンノ編集部に異動してきてからは、大学生に直接話を聞く機会も必ず毎月作っているのだそう。

「公式で行う“読者会”以外に、ノンノを読んでいない大学生も含めて個人的にも話を聞く機会を月に2回は作っています。公式のものよりもざっくばらんな感じで、友達と2人で参加してもらい、コロナ前はカフェでパフェでも食べながら……ということが多かったのですが、コロナ以降はzoomを利用しています。対面ではなくなりましたが、おかげで全国の大学生と話をすることができるようになりました。彼女たちは自宅から参加するので、『最近買った服はこれです~』とクローゼットから購入したものを持ってきてくれたり……。むしろリアルな情報を得られることも多いです」

たくさんの大学生と会うときも全国のおしゃれスナップと同様、微妙な違いを発見することが重要であると言います。

「都心のキャンパスと郊外のキャンパスは履いている靴が違ったり、同じ大学でも学部が違うと必要としている服が違うということもあります。今は好きなものが多様化している時代なので、Z世代といっても単純に一括りにはできません。全員に刺さるものを作ることが難しい分、できる限り実際に話をした大学生の言葉をもとに企画を立てるようになりました。“想像上の大学生”をもとに話をしていると、本当にこれは読者に届くのかな、と不安になってしまいますが、顔が見える人と話したことをもとにすると、企画に芯が通るんです。毎月10人ほどの大学生と話していると、なんとなく今の彼女たちの空気感や変化を編集部のみんなで共有できるようになるので、毎月の編集会議にもリアルなテーマがたくさん出てきます。一方でファッション誌としての矜持をもって、ファッションやメイクの楽しさや夢、歴史もお見せしたいので、シンプルに美しい、シンプルにかわいいと思っていただけるページも作っていきたいです」

このようにテーマを丁寧に練っていく中込編集長が過去に手掛けたタイアップは、大きな話題を呼んだことも。

ADNAVIでもご紹介したユニクロStyleHint原宿店での施策では、店頭に並んだ240台のディスプレイにノンノモデル4人の春コーデが並び、圧巻の世界観を作り上げました。また、読者への電話取材を重ね、現場担当者とともにキャンペーンのキャッチコピーやメッセージまで作成した青山商事様との大学入学式用スーツを扱ったタイアップも印象深い事例です。

加えて、LEE編集部時代から「コラボ職人」の異名をとるほど、コラボ商品案件を多数手がけてきました。

「コラボ商品の企画こそ、リアルな声が重要なんです。大学生と春先の新入生の荷物量の多さについてや、設定している値段で買いたくなるバッグの色について話し合った内容を盛り込んだバッグは売り上げも良かったと聞いています。LEEの頃作った靴は『ベビーカーのストッパーをつま先で操作するので靴の先はエナメル切り替えがいい』とか、『砂場に入ったりもするので本革より合皮がいい』とか、細かいポイントを拾い、5万足のヒット作となりました。編集者目線だけでなく、ひとりの生活者としての目線でものを見られるかどうかがヒット商品へのカギだと思っています」

中込編集長が率いる新生ノンノは、デジタルと紙の良さをしっかり設計していくとのこと。

「関心のあるものをしっかりアルゴリズムに乗せて、当て込んでアプローチしていくのはWebとSNSで行います。本誌では、雑誌のもっとも魅力的な面である、アルゴリズムとは関係なく、物理的に同じ1冊に載っているからこそ目にする機会が生まれるという『偶然知る』ための見せ方や特集の作り方を考えていきたいです。ノンノは多くのものが“ファーストタッチ世代”。スーツ、時計、ジュエリー、メイク、成人式の和装、海外旅行……ノンノが何かを始めるきっかけになる存在になれたらと思っています。そして、情報があふれている時代だからこそ、きちんと編集された情報を届けたい。そういう伝統は守りつつも、ノンノの次の50年につなげていきたいと思います」

プライベートでは、源氏物語をこよなく愛するという中込編集長。物語のモデルになった場所を“巡礼”するなどし、来年の大河ドラマを前にますますその世界にハマっているそうです。

「小学生の頃、紫式部の伝記漫画を読んで、その後児童文学でも読みました。でもあとがきを読んで『どうも児童文学は全部ではないらしい』ということに気づき、書店で与謝野晶子版の文庫を買いました。子供のころは恋愛物語として読んでいましたが、大人になると政治物語だな、と感じられたり、読み手側の経験値によっても捉え方が変わるところが面白くて。源氏物語の関連書籍は目にしたら買っているという状態です」

生霊となった六条御息所の気持ちも、子供の頃は「ひどい!こわい!」と思っていましたが、大人になった今となっては「わかる気がする」

聖地巡礼のように京都を訪れることも多く、紫式部のお墓にも足を運んだそうです。

「私が訪れた大学生時代、そこにはノートが置かれていて、『編集者になります!』って紫式部に宣言してきました(笑)。来年の大河ドラマ『光る君へ』は紫式部の生涯を描いた物語です。今から楽しみにしています」

プライベートでも「現場」にこだわる中込新編集長が作り上げるノンノに、どうぞご注目ください。

 

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