出版社Webメディアは
デジタルマーケティングの
新たな一手となるのか?①

日本アドバタイザーズ協会、日本雑誌協会、日本雑誌広告協会の3団体共催によるデジタル広告効果測定調査「M-VALUE DIGITAL」は、このたびその結果をまとめ、7月20日(木)『出版社Webメディアはデジタルマーケティングの新たな一手となるのか』と題して、集英社にて報告セミナーが開催いたしました。

第1講:デジタル広告の現状とM-VALUE DIGITALの位置づけ

講談社の長崎亘宏氏

M-VALUEワーキンググループを代表して、講談社の長崎亘宏氏が登壇。M-VALIEの調査の経緯を説明し、今回のテーマ「出版社Webメディアはデジタルマーケティングの新たな一手となるのか」を踏まえて、デジタル広告の現状、課題をまとめました。


最初に提示されたのが上の図表(「広告主動態調査2023」日経広告研究所)。

「ROI(費用対効果)やネット上での商品購入などの最終的な成果獲得、クリックレスポンスなども重視されていると思いきや、それ以上に『長期的な視点に立ったファンづくり』といった項目が上位概念に来ています。今日のセミナーはこの点を踏まえて、聞いていただくと、より理解も深まると思います」(長崎氏)

上記の点やインターネット広告の課題を踏まえ、長崎氏からの「インターネット広告の測定指標」について提言がありました。

「『到達指標(リーチ)』や『購入(CV)』の可視化は重要ではありますが、さらに“ファンづくり”につながる大切な指標があるのではないか。『興味関心・購入意向』といったミッドファネル効果もインターネット広告の測定指標には求められています」(同)

出版Webメディアは、広告主のリクエストに応えられているのか? 「M-VALUE DIGITAL」の第1回調査はその点にクローズアップしています。

「M-VALUE DIGITAL」とは日本雑誌広告協会を軸に、出版社、広告会社、調査会社の垣根を越えたコンソーシアム形式で運営されている、オープンかつ透明性の高いプロジェクトです。

「雑誌の評価はいまや本誌だけではなく、そこから広がる電子版やウェブメディア、SNSアカウントも含めて評価対象に。そのなかで、雑誌広告効果を測定する『M-VALUE』も2013年以降、どんどんデジタルシフトしています。2021年には新たに出版社間の共通指標を設立し、調査・運用スキームを開発。2023年の調査では、ミッドファネル指標を拡充し、一般Webメディアとの比較も調査しました」(同)

最後に、このセミナーのタイトル『出版社Webメディアはデジタルマーケティングの新たな一手となるのか』に託された思いを紹介しました。

検証① 雑誌メディアが本来持っている、メディアブランドとコンテンツ価値が、Webメディアに転換されたとしても広告効果として反映されるのか?

検証② 出版社Webメディアと、一般Webメディアそれぞれのユーザー像と、情報源としての使われ方の違いは何か?

 検証③ 出版社Webメディアは、広告主による「長期的な視点に立ったファンづくり」に貢献できているのか?

 

第2講:「M-VALUE DIGITAL」第1回調査結果について

ビデオリサーチ中山不尽子氏

続いて、ビデオリサーチ 中山不尽子氏が登壇し、出版社Webメディアと一般Webメディアの比較を、情報収集に対する意識、情報源に対する意識、企画(タイアップ)広告効果、広告接触後の「心理変容」の4つの観点から解説しました。

上の表は一般Webメディアと出版社Webメディアの差を一覧にしたもの。両者の間には、いろいろと「違い」があることがわかりました。

中でも『タイアップ広告効果』においては、興味深い結果が出ました。

「よく知っている利用経験者層、よく知っているが未経験者の層においては、どちらも差は少ないのですが、よく知らない層(潜在的なポテンシャル層)に対するミッドファネル効果については、一般Webメディアと出版社Webメディアとで非常に大きな差が見られました。出版社Webメディアは『広告に接触することで気持ちが高まる』『興味が湧く』といったポイントがとくに強く、顕在層だけでなく、潜在層にもリーチすると考えられる結果が出ました」(中山氏)

『心理変容』について見ると、一般webユーザーは接触後、新たな情報を求め、出版社Webメディアのユーザーは「お試し」意向が向上していました。

「一般webメディア閲読者では『口コミサイトを見たいと思った』が1位に。いま、広告に接触しているのに、その後の行動が「口コミサイトを見たい」。つまり、自分の情報精度を上げたいという欲求が見られました。一方で出版社webメディアの場合は、広告に接触後は「お試ししてみたい」と体験行動に直結しています。ここが大きな違いと言えます」(同)

ここから、さらに出版社webメディアの広告効果について掘り下げられ、ミッドファネル効果、体験促進効果、潜在層開拓効果を確認できたことが報告されました。

「広告記事に対する好感度が一般Webメディアに比べて高い結果となっており、記事に対する好意がすべてのファネルを押し上げているということが読み取れます。ミッドファネル効果が高いことがわかります」(中山氏)

「出版Webメディアに関しては、『コンテンツを楽しむ』→『実感したい』というサイクルができていることが見受けられました」(中山氏)

「利用意向ありと回答の方の購入時期まで調べてみると、読んで『すぐ買う』など、購入時期が明確に決まっている割合は一般Webメディアの方がプラス8ポイント高くなっています。一方、出版Webメディアは『次回購入予定』の割合が高く、”次買いたい”という気持ちの醸成につながっていることがわかります」(中山氏)

第2講では一般メディアとWebメディアの違い、それぞれの特徴をあぶりだしました。

一般Webメディアは、興味ある情報をピンポイントで選び続ける、または指名買い、決め買い的な意識で情報に接している様子が見受けられます。一方で、出版社メディアはメディア発の情報を素直に受け入れ、自分に置き換えて理解する意識がとても高い。それゆえ、広告接触前に理解が十分でない閲読者においても、体験意向の効果がとても高くなっている傾向がわかりました。

(つづく)

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