【新編集長インタビュー】ペルソナやインサイトで語れない、令和の「40歳男子」の掴み方【UOMO】稲葉翔

今年、創刊20周年を迎えたUOMO。2019年にスタートした名物企画「試着フェス®」は人気が衰えることなく、周年イベントとして行われた「スーパー試着フェス®」は、130人を超える読者が来場しました。滞在時間8時間超えの強者や海外からの参加者もいるなど、その熱量は毎回ヒートアップ。知的好奇心が高く、おしゃれが好きな「40歳男子」をどう掴んでいくのか、6月にプリント版編集長に就任した稲葉に「これからのUOMOの在り方」について聞きました。

UOMO編集部 プリント版編集長 稲葉 翔

2004年入社。non-no編集部、Marisol編集部を経て、UOMO、MEN’S NON-NOのメンズ誌へ。2025年6月より現職。プライベートでは大のサウナ好き。自身のサウナ連載を持っていたことも。

 

編集者を目指したのは「スポーツ雑誌」に携わりたかったから。集英社に入社して『Sportiva』編集部に配属希望を出したものの、最初の配属先は『non-no』でした。占いとダイエットと恋愛、芸能人のインタビューで6年間、編集者の基本を叩き込まれ、異動後はファッションも担当。ファッションからカルチャーまで、俯瞰した視点で「今」を捉えられるようになったと思います。

Q UOMOがターゲットとする「40歳男子」を改めて定義してください

UOMOに来る前にMEN’S NON-NOに5年いたのですが、だからこそ気づいたことがあります。どちらの雑誌も「ファッションが好き」というところは変わりませんが、UOMOの読者は当たり前ですが“大人”なんですよね。

MEN’S NON-NOは「ファッションが好き!」という理由で、誌面で紹介されたアイテムを購入する人は少なくありません。ところがUOMOはそこに大人ならではのバイアスがある。つまり家庭があり、子どもがいて、社会的な立場もあったりするわけです。リアルな生活スタイルを考えると、その服を着ていく機会があるのか、家に収納スペースはあるのか、家族を優先しなくていいのか、といった40代ならではの“事情”がある。彼らの“折り合い”を踏まえてのおしゃれの提案が求められていると感じています。

とはいえ「40歳男子」に敢えて「男子」という言葉を入れているのは、読者に好奇心の高さ、ミーハーな部分も入っているから。そんな彼らに向けて、リアリティのあるUOMOらしい提案をしていきたいと考えています。

 

Q「40歳男子」の具体的なインサイトは?

嗜好が完全に「多様化」しています。これまで、ターゲットを決める際に「ペルソナ」「セグメント」「インサイト」という言葉を使って定義してきたと思いますが、これからは、そこに収まる人などいなくなるのではないか、と思っています。

たとえば、これまではラグジュアリーブランドを好む人のペルソナに「推し活」といったキーワードはもしかしたら入っていなかったかもしれません。逆もしかりで、大人の世界でその二つのキーワードが交わることは少なかったと思います。ところが今は、それが当たり前のように混在する時代になりました。ライフスタイルが多様化し、個々の「好き」のパターンが無限にあるという感じです。

セレクトショップの展示会などで「今、どんなものが売れてますか?」と聞いても、答えは一つじゃない。でもそれは当然で、ラグジュアリーブランドも人気だし、カジュアルも古着も人気。スニーカーもクラッシックな革靴も売れる。顧客の好みが多様化しているので「これ」とは言えないわけです。それは雑誌も同じで、読者が求めるものはこちらが決めたペルソナやインサイトよりずっと広い。ただ、そのセレクトショップという箱の中で買うからセンスが良いものが手に入るし、UOMOに掲載されているなら、大人のおしゃれという枠に入っているという安心感があるのだと思います。

 

Q では「雑誌であることの価値」はどう考えていますか?

有難いことにUOMO読者は誌面に掲載されたものを電話でも問い合わせてくれたりと、積極的にリアクションをおこしてくれる人たちです。プレスの方々から「タイアップに掲載した商品、お問い合わせが来てご購入いただきました」という反響を聞くことも少なくありません。先ほどのセレクトショップの例ではありませんが「UOMOがセレクトしたもの」「UOMOの提案」に価値を感じてくださっているという点では、安心できる「箱」になっているのだと思います。

ただし、今後は雑誌の買い方も変わってくると思います。先ほどの「多様性」を考えると、読者は興味がある特集を買う。今月はUOMOを買ったけど、来月は別の雑誌を買うということも当然あるでしょう。「40歳男子」がどのような“事象”に興味があり、そこに大人であることや知的好奇心が高いUOMOらしさを掛け合わせていく。どこを掬っていくか、それが雑誌編集者に求められると思います。

 

Q UOMOの強みとは?

「試着フェス®」を見ていただいてもわかるように、読者がファッションが大好きな大人であることは間違いありません。過去にはカルティエと組んだ時計試着フェスを行ったり、様々なブランドが一堂に会する時計フェスもまた10月に予定しています。その熱量の高さ、購買力の高さを持つ読者であることはUOMOの強みです。

また、クリエイティブチーム(カメラマンやスタイリスト、ヘアメイク)のレベルの高さ、作り出す世界観の強さもUOMOらしさだと自負しています。さらに、彼らも読者と同じように家族がいたり、同じ社会で生きている大人世代。「40歳男子」の折り合いや多様化の意味を理解しながら、それをステルス的にクリエイティブに差し込んでくれる。これはかなり重要だと思っています。

 

Q 稲葉編集長になり、変わっていくことは?

「動機と絞り込み」を重視していきます。なぜこれを買いたいのか。おしゃれだから、流行っているからではなく、センスのいい大人がリアルな事情も踏まえて買うべき理由をきっちりプレゼンテーションしていく必要があると思っています。そして絞り込みは、ターゲットを大事にするということ。個々の趣味嗜好が多様化するほど、絞り込んだターゲットを明確に拾わなければなりません。どこを拾うかは、編集者のセンスになってきますが、これまで以上にモノが動きやすくなるはずです。

この「動機と絞り込み」をどの切り口で行うかがまさにセンスであり、読者を掴んでいくポイント。「40歳男子」の多様化する消費行動をずっと見てきたUOMOの情報の届け方にご期待ください。

 

Q どんな編集長を目指す?

入社20年で11人の編集長の下でキャリアを積んできました。これはかなり多い方だと思いますが、いろんな編集長のやり方を見てきたので「理想の編集長像」ができています。これはもちろん様々なスタイルがあると思いますが、具体的には、スペシャリストではなくきちんと俯瞰でものごとをとらえられるゼネラリストであること。そしてスペシャリスト、つまり知識のある人たちの力を借りて、集めて編んでいく。そうしていいものをつくる編集者でありたいですね。それは部下にも伝えたい。ゼネラリストである編集者が、ものごとを俯瞰することができて、これだけ多様化が進んだ時代を読んでいけるのだと思います。

 

Q プライベートでハマっていることは?

“サウナ好き”ということは、かなり知られているので今さらなのですが、ハマったきっかけはnon-no編集部時代。男子編集者だけで仕事帰りに近くの「スパ ラクーア」に行くことがたびたびありました。当時はまだサウナブーム以前。アウフグースや熱波師という言葉もあまり知られていなくて、自分も最初はあまり興味なかったのですが、一度体験してその気持ちよさ、ととのい方にすっかりハマってしまって。その後、UOMOでは自分のサウナ連載を持って、フィンランドにも取材に行ったりしました。

もうひとつは、カメラ。これもUOMOで丸々一冊スナップ号をやったときに、なんと自分が撮影したページをつくらせてもらいました。プロのカメラマンが見ると笑っちゃうレベルだと思いますが。もともと父親がカメラ好きで、フィルムのライカM3を譲り受けたのがきっかけです。自分が撮影した写真が雑誌に大きく掲載されるなんて、今振り返るととても贅沢な経験だったと思いますね。

 

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