〈ファンづくりのヒント〉
WEB UOMO山崎編集長の
企画力の源泉。

現代はあらゆるモノが溢れ、ほとんどの消費者ニーズは満たされた状態です。その中でモノやサービスを選び取ってもらうとき、重要なのが「ファン作り」。日夜この「ファン作り」に頭を悩ませるマーケティング担当者も多いのではないでしょうか?『ADNAVI』 では広告人やマーケターに向けて「【仕掛け人インタビュー】ファンづくりのヒント」と題して、アイデアのひらめきとなるような情報をお届けしています。

仕掛け人インタビュー第2回はUOMOブランド統括/WEB UOMO編集長を務める山崎貴之。「試着フェス®」をはじめとする、既存のスタイルに捉われない発想で、ファンを巻き込む企画を生み出します。今回のインタビューではその企画力や発想の源泉に迫ります。

山崎貴之:1995年に集英社へ入社し『MORE』編集部に配属。その後『SPUR』へ異動し2015年より同誌編集長に。 2017年より『UOMO』編集長に就任。 現在はUOMOのブランド統括を行いながらWEB UOMO編集長を務める。

– 時代の潮流を読むUOMOのリブランディング。「自分ごと化」でファンを作る。

僕は95年に集英社に入社してから2017年までずっと女性誌にいたんですが、『UOMO』で初めて男性誌の編集をすることになったんです。ちょうどUOMOではウェブのリニューアルが予定されており、本誌と同時にリブランディングをしました。それまでも確かに「UOMOっぽいスタイル」というのはあったと思うんですけど、じゃあどんな男の人が読んでるの?」と言われたときに「何となく服にこだわりがある人?」くらいでパッと説明しづらかった。読者がもっと具体的に「自分ごと化」できるようなスタイル作りを目指しました。そこで「40歳男子」とか「文化系男子」っていう言葉も作りました。

本誌を作る体制も、大特集を作る形に変えました。特集ごとにあらかじめページ数を決めて台割を作るセオリー通りの方法だけでなく、特集の規模を大きくして、もっと柔軟に横断的に作る方法を導入したんです。例えば80ページの特集なら、コアの企画はある程度決めておくけど、取材途中で変更がきくようにあえて未定の部分を残したり、どこにでも差し込める2ページや1ページの細切れなコンテンツも準備したりして、校了前に全体をシャッフルして台割を作り直すような手法です。「この号はスナップ」「この号は試着フェス®」と、大きい目標に向かって編集部全員で作るようにしたことで、読者と寄り添うような雑誌の空気感がうまれた気はします。

あとは、コロナ禍もインパクトがありましたよね。UOMOはこと「スーツ」に関しては大きくは扱ってなかったんです。でもコロナ禍があって、それまでスーツを毎日着ていた人たちのライフスタイルが変わりましたよね。社会全体がカジュアル化していく流れに、UOMOの「大人のためのカジュアル、だけど品の良い方向性」がマッチした。後で詳しくお話しする「試着フェス®」(新作ファッションを参加者が試着してリアルな感想で作る特集)では、リアルで人を集めるのが難しい部分もありましたが、ウェブでも動画を使ってコンテンツを発信するなど、複合的な見せ方もできました。

– 今までにないスタイルが好評の「試着フェス®」。企画のウラ側は?

意外に思われるかもしれませんが、実は企画のスタートは結構硬派な発想でした。というのも、「家電や車なら良いところはいい、悪いところは悪いと評する雑誌もあるのに、服はなんでだめなの?」と以前から疑問で(笑)。ファッション特集にも批評的な視点を持ち込めるのではと思っていました。別に全部がダメじゃないけど、ここはもっとこうして欲しいという気持ちは本来あって当然なんですよね。どうしたら服に不満を述べるだけでなく、読者にとっても面白いものになるかと考えていました。その行き着いた先が「試着フェス®」。参加者に実際に試着してもらって、「ほしい」や「惜しい」という観点でもコメントしてもらう。そのリアルな声を届けられたら、今までにないものができるんじゃないかと考えたんです。

フェスを一回やってみたら、当初考えていたこととは別の部分でも面白さを感じられました。それは「なんの制約もない試着は楽しい」ということ。店頭での試着って、当たり前ですけどその先の「買う」行為が前提じゃないですか。何着も着てみて買わないと悪いかな、的なプレッシャー。でも試着フェス®はそのプレッシャーから解放されて、純粋に「着ること」を楽しんでもらえる。クライアントも今までと違ったPRができますし、ダイレクトな顧客の声が拾えます。うまく皆にとってプラスになるような企画になって、スケールも広げながら続いているのは嬉しいですよね。

昨年12月号UOMOの巻頭特集「2021年秋冬 試着フェス」

– 「新しい企画」はどうやって生みだす? 自分の「面白い」を仕事で具現化する山崎の流儀。

新しい企画を考えるコツ… いろんな考え方がありますが、僕が雑誌の仕事で価値を置いているのが「これまでにないページを作りたい」「今までと違うことをしてみたい」なんです。 だって読者も40代でファッション誌をいきなり読み出した訳じゃなくて、もう20年くらい読み続けているでしょう? だったらちょっと変わったことをしないと、自分も読者も飽きてしまう。まず自分が作った経験がないことを考えてみて、周囲も一緒に楽しんでもらうにはどうしたらいいか企画する感じかもしれないですね。

WEB UOMOの連続ドラマ『メゾンタキトウ』(AD NAVI内の記事で見る>)もそうで、そもそもは「ドラマ」を一度作ってみたかったんです。でも単にドラマができました、だとUOMOである意味がないから、映像の中に出る服を「いいな!」と思ってすぐに買える仕組みを加えたら新しくなるし、面白い。UOMOとして作る意味も出てくる。これに限らずですが、周囲をどう説得するかは苦心します。

よく「みんなで企画・案出しをしよう」という機会があると思うのですが、自分が「これがやりたい!」っていう時に、みんなに聞いて出た意見を足していったら、尖った部分が丸くなってしまう。編集者や企画者は孤独に考え抜く時間が必要だと思います。人から言われて、落ち着いた案を作るよりは思いきったほうがいい。最初はちょっと無茶振りになってしまうかもしれないけれど、「自分だから出せる企画」にこだわってほしいです。ちなみに、僕は今でも新しいアイデアを言い出す瞬間は恥ずかしいんですよ。受け入れてもらえるかとか、葛藤しています。ものすごい時間をかけて企画書を作っても、やりすぎて全然使われないこともありますね。でも「せっかく頼んでくれるんだから、他ではやっていません!」っていう新しいことをしたいと常に思っています。

夜の連続ドラマ『メゾンタキトウ』シリーズ(滝藤賢一主演、片山慎三 監督ほか) You tubeで見る>

– これからの「面白い」こと。生活様式の変化をポジティブに表現していく。

社会全体でみるとコロナ禍を経て、外出自粛などネガティブ部分が強調されることが多かったと思います。でももうそういった空気は読者もうんざりしていると思うんです。皆さんも外に出ていきたい!という気持ちがあって、リアルな体験を求めている。だから企画側もポジティブなところに目をむけて作っていくべきなんじゃないでしょうか。
例えばリモートワークの環境が一気に整って、カジュアルなファッションを楽しめるようになったかもしれないし、思い切って地方に住んじゃおう!なんて人もいるかもしれません。UOMOの読者層である40代の男性を見ても、自分のやりたいスタイルが許容されるようになって趣味や服装にお金をかける消費も増えてきた印象です(6月末に『大人の自分勝手消費』と題したウェビナーを開催予定)。コロナ禍を機に消費者が「やめたこと」と「はじめたこと」に着目するのも重要だと思います。

「試着フェス®」のような試みをもっと広げて、ファッションのファンコミュニティを作りたいとも考えています。以前の取材で「元々SNSで繋がっていなかった人と試着フェス会場で偶然会えた」というコメントをいただいたのが印象に残っているんです。たしかに40代前後でファッションがとにかく好きな男性、しかも同じような系統の人を探すとなると意外と身近にいない。お気に入りのショップに行くにもひとり、ということが多かったそうです。そういう人たちがWEBでもリアルでも繋がれたらもっと面白いんじゃないかと思っています。コロナ下ではやはり本格的なリアルイベント化には制約もあったので、今後は力を入れていきたいですね。またWEB UOMOではマンガ企画や、UOMOオリジナルのウェアの展開なんかもしたいと思っています。もちろん各ブランドとコラボして。今後も面白いことをどんどん企画していきますので、最新情報をチェックしてください。

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・第1回〈集英社 エディターズ・ラボ〉企業のファンづくりになぜ編集力が必要なのか。

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