出版社Webメディアは
デジタルマーケティングの
新たな一手となるのか?②
日本アドバタイザーズ協会、日本雑誌協会、日本雑誌広告協会の3団体共催によるデジタル広告効果測定調査「M-VALUE DIGITAL」は、このたびその結果をまとめ、7月20日(木)『出版社Webメディアはデジタルマーケティングの新たな一手となるのか』と題して、集英社にて報告セミナーが開催いたしました。前編では、第1講でインターネット広告の現状と今回の調査の背景についての話があり、第2講ではビデオリサーチ中山様より、「M-VALUE DIGITAL」第1回調査結果報告がありました。
第3講:パネルディスカッション
第3講では調査結果を受けて、パネルディスカッションを行いました。登壇者は花王株式会社マーケティング 創発センター メディア企画開発部部長 立山昭洋氏と、M-VALUEワーキンググループの株式会社博報堂DYメディアパートナーズ 前川昌子氏、株式会社ビデオリサーチ 中山不尽子氏、集英社 古賀路の計4名が登壇しました。
古賀 今回の調査では、プリントメディア委員会副委員長である立山さんに、出版社Webメディアと一般Webメディアの違いを「優劣ではなく、それぞれの特徴・特性として捉えられるように可視化できると良い」というアドバイスを頂戴しました。今回の結果を受けて、いかがでしょうか。
立山氏 出版社Webメディアと一般Webメディアの比較ですが、一般Webメディアの定義がなかなか難しいところで。私どもの「美容・コスメ領域」でいえば、「アットコスメ(@cosme)」さんとなり、こちらを『MAQUIA』『VOCE』を比べるというような意味合いで受け止めています。非常に難しい調査だったとは思います、思っていた以上にいろんなことが明確になったのではないかと感じております。
前川氏 私は雑誌領域の広告を担当しており、デジタルタイアップがすごく増えているものの、効果が見えにくいという課題も感じております。同じ1PVでも一般Webメディアと出版社Webメディアは違うということが、今回のミッドファネルの細かい調査で見えてきたので、数字ではない質の部分を測る調査としても非常に有効だったのではないかと思っております。
古賀 今回花王様には「エッセンシャル・ザ・ビューティー」の広告タイアップで調査ご協力をいただきました。その結果についても中山さんご説明お願いいたします。
中山氏 検証ポイントは以下の4つになります。
1.商品ブランドに対する認知(意識)状況。1ミッドファネル効果とメディア別効果の特長。3.タイアップ記事における興味・関心要素。4.一般Webメディア、・出版Webメディアの効果。「『到達指標(リーチ)』や『購入(CV)』の可視化は重要ではありますが、さらに“ファンづくり”につながる、大切な指標があるのではないか。『興味関心・購入意向』といったミッドファネル効果もインターネット広告の測定指標には求められています。
結果は以下の図表にまとめました。
古賀 それぞれ、今回のレポートの中で特に印象に残った評価指標やスコアを挙げていただけますか。
中川氏 自由回答も2万件以上拝読し、出版社Webメディアだとテーマパークで楽しむように記事を楽しんでいる、キラキラしているコメントを数多く見つけました。「特集のテーマ・内容に興味がある」で10ポイント以上差がついているのは、楽しんでやっている、まっすぐな気持ちで受け入れているということが伝わってきて、印象に残っています。
立山氏 出版社さんのメディアというのは、元々雑誌本誌があって、長い間価値ある情報発信をして、読者とつながってきているわけですから、それが当然ベースとなって、オンラインメディアもそういった強い結びつき、読者の熱量がそのまま続いているのではないかと思います。
一方でアットコスメさんのような口コミサイトは、購入したいものがある程度決まってくると、実際買う直前の答え合わせみたいなところに活用されるのかな、と。出版社Webメディアは興味関心のある世界の中から自分に合ったものを見つける楽しさ、見つけながら自分ゴト化していくところが、クチコミサイト大きく違うところだと感じました。
どちらも得意領域が違うので、極端になりますけど……すぐにでも買ってもらいたいのであればクチコミサイトに、ブランドと商品を好きになってもらいたいならば、出版系サイトに出稿するべきではないか。仕分けするならば、そんなことも言えるのではないでしょうか。
前川氏 アットコスメさんのサイトは何を買おうか迷っている人の後押しになり、時短で情報を見ている人とって、シンプルに情報収集ができるところが長所かと思います。
今回の調査では認知度別の調査は興味深いものでした。商品を知らなかった人に興味を喚起させファン化させるというのは紙の雑誌でも言われてきたことですが、Web上でも同様の結果がでてきたのは、雑誌に携わってきたものとしてうれしかったです。新商品は出版社Webメディアでファン化させ、理解してもらうというところが大きく影響してくるのかなと思っています。
古賀 私からはMAQUIAのユーザーからいただいたフリーアンサーについてご説明します。本当にエンゲージメントの高さに涙が出るほど感動したのですが……。フリーアンサーでは主に「情報が新しい」「内容が好き」「自分磨き」の3ジャンルに分けられました。
その中でも「自分磨き」の回答、「毎日を少しでもキラキラにしたいから」など、モチベーションアップに貢献していると評価をいただいているところが、個人的にはとても興味深かったです。
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~MAQUIA ONLINE閲読理由(自由回答を一部抜粋)~
【情報が新しい、情報量が多い】
・自分の知らないことがたくさん書いてあるので、美容好きとしてはワクワクします。常に新しい情報を得られるから。美容の参考になるし、暇な時間によく読めるから。(女性22才)
・最近の美容情報をいち早く知れるため。お試しキャンペーンなどで話題の商品を実際に使用できるのが、特に魅力なので(女性28才)
【編集、内容が好き】
・美容情報、コスメ情報がわかりやすくていつも助かっています😊。ありがとうございます。(女性29才)
・MAQUIAの全てが好き(⋈◍>◡<◍)。✧♡、自分の趣味嗜好に合っている(女性30才)
【自分磨きに最適!】
・ファッション👕、美容情報💇を手に入れるため。毎日を少しでもキラキラにしたいから。(女性28才)
・自分磨きをもっとしようと思わせてくれるから。(女性42才)
・美に関する情報がとても理解しやすく紹介を得て有効な役立ちを感じ実践したり製品詳細も嬉しい。自分にとって必需を思います。得るもの多く感謝ですね(女性50才)
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広告に対する評価に関しては、「(悩みが)すべてに自分がすべて当てはまるので、使ってみたいと思いました」というご意見がありました。ブランド力パッケージに対するポジティブなご意見も多数ございました。ほかにも「記事に信頼を置ける」「エッセンシャル自体も昔から馴染みのあるブランド名で好感が持てた」など、ブランドリフトに貢献していると思われるコメントも見られました。
中山氏 MAQUIAさんの自由回答は非常に絵文字が多くて、楽しみながら回答されている様子が伝わってきました。
古賀 今回から「M-VALUE DIGITAL」と名前を変えての調査でしたが、課題もあると思います。調査に対するご要望や改善点などお気づきの点があれば、教えていただけますか。
立山氏 網羅的な調査を時間かけてやるというよりは、個別の課題に沿ってできるだけすぐに次のアクションに反映できる調査があるといいと感じました。
もうひとつは、広告出稿側からいうと、デジタルメディアはものすごく広いので、プラットフォーム活用との兼ね合いで、雑誌出版系のウェブサイトから派生するSNSやECなど話題を広げるような仕組みを作るなど、どうやったら最終的にもっと大きなところに広げていけるかという点に、ぜひ意識を持っていただければ、と思いました。
前川氏 今後は、もう少し調査の数なども増やしていきたいと思っています。同じ調査フォーマットで結果を蓄積できれば、その先にもつながるでしょうし、私たちももっと良い提案ができるのではないかと思っています。
「M-VALUE DIGITAL」がデジタルコンテンツタイプのミッドファネル調査のスタンダードになることが目標です。
中山氏 調査担当としては、より実務にリアルにご活用いただけるようなものをご提供できたらと思っております。スピード感や利便性を意識し、皆さんに使っていただけるようなフレーム作りをしたいと思います。(使っていく)「仲間」を増やしていきたいです。
古賀 「出版社Webメディアはデジタルマーケティングの新たな一手になるのか」というテーマでお話してきました。最後に皆さんからご意見をいただけますか。
立山氏 今回の調査でもだいぶはっきりしたこともありますし、かなり役立つと思います。細かく見ていけば、カテゴリーごと、メディアごとに差はあると思いますが、そこを突き詰めても大きなうねりにはならないと思います。紙とオンラインをあわせ持つハイブリッドメディアとしての価値、強みを活かしていくことで、フェーズがひとつ上がると思います。
前川 紙であろうとWebであろうと、出版社(編集部)が作るコンテンツは誰も疑う余地のない素晴らしいものです。その素敵なコンテンツで、どれだけ多くの、質が高く、ターゲットとして適性な、ファンになってくれる潜在層に届けられるか、という点で雑誌ブランドのメディアが果たす役割は非常に大きいと思っております。潜在層の開拓というところを今後も証明できるように、今後も調査を続けたら、と思います。
中山 今日の結果を見ると、一般Webメディアと出版社Webメディアの読者構成がどのように変わっていくのかについても、引き続き調査していきたいです。
古賀 あらためて雑誌ブランドの価値は、デジタルに形を変えても変わらないんだと感じました。新しい情報との出会いの場は、偶然の出会い、人生を豊かにする、さまざまなセレンディピティ提供の場でもあります。雑誌ブランドの価値を、デジタルを活用し、さらに高めていけたらと思います。みなさま、本日はありがとうございました。
(終わり)