講談社・小学館・集英社のADサイト担当者鼎談 「広告主・広告会社に出版社のソリューションをお届けしたい」
日本雑誌広告協会の会報『雑誌広告』2025年5月号で、「出版社の広告情報発信戦略―講談社・集英社・小学館のADサイト比較研究―」と題した特集が組まれました。小学館の『AD POCKET』、講談社の『AD ステーション』(『Cステーション』グループ)、集英社の『ADNAVI』について、サイトの特徴や発信方針が紹介されています。

各社が特集の取材にお応えしたことをきっかけに、「今度は同じ目的のサイトをもつ三社の担当者同士でぜひ意見交換を」とご提案いただき、一堂に会しての鼎談が実現。『雑誌広告』特集を通しての感想や注目したポイント、互いの取り組みに刺激を受けた点や、出版メディアのADサイトとして目指す方向について話しました。ぜひご一読ください。
それぞれのADサイトに見えた気づき。媒体情報発信からソリューション提案へ
──『雑誌広告』5月号では、それぞれのサイトの特徴が紹介されましたが、他社の記事で印象に残った点はありましたか?
集英社・黒沢奈津子(以下 黒沢)
講談社の『Cステーション』は、『ADステーション』や『マンガIPサーチ』『講談社SDGs』と一体で運営している点が非常に印象的でした。単なるADサイトではなく、メディアとしての存在感がありますね。
講談社・川崎耕司(以下 川崎)
『Cステーション』は、もともと「広告主にもっと興味を持ってもらわなければ」という危機感から出来たコンテンツマーケティングのサイトです。その危機感はみなさんのADサイトとも共通する部分が多いと思います。
小学館・河村英紀(以下 河村)
グループを形成して相互補完しつつ、立体的に情報発信していますよね。集英社『ADNAVI』は各メディアの読者アンケート結果を分析してホワイトペーパー化している点に注目しています。メディアが持つ強みや特徴をコンテンツ化して発信することは、出版社にとって相性がいいはずですからね。
川崎
そうですね。タイトルが「【BAILA キャリア女子総研】今どき働く30代女性のインサイト」といったように、マーケター目線を感じます。
黒沢
雑誌メディアならではの視点でとらえたターゲットインサイトが、広告主や広告会社にとってのソリューションや提案ヒントになればという思いですね。小学館『AD POCKET』は、新規・既存の双方のエンゲージメントを強化している姿勢が印象的です。
川崎
問い合わせ導線に、どう商談するのかまで明記してあり、商談機会をわかりやすく設計されていますね。
河村
ADサイトは成果の可視化が難しいですが、私たちはKPIを「会員登録数」に定め、そこからどう商談に結びつけていくかを追っています。今は「この媒体に出したい」ではなく、「この媒体にはどんなソリューションがあるか」で判断される時代。これは、2社の取り組みにも共通する姿勢だと感じますね。
3社のADサイトに共通するのは、マーケティング視点での発信
――3つのADサイトに重なる部分も見えてきました。それぞれで共通していると感じたことはありますか?
河村
マンガIPを強化しようとする方向性は一致していると思います。イベントやウェビナー、ホワイトペーパーといった手法で顧客との新たな接点をつくろうとしている点も共通しています。
川崎
河村さんが『雑誌広告』の特集でおっしゃっていたように、出版社の広告ビジネスは今や「業界でもニッチな存在」です。だからこそ、媒体資料を並べるだけではなく、さまざまなサービスをマーケターに発信する拠点としてのADサイトを知ってもらう必要があると感じます。
黒沢
メディア情報だけではなく、サービスやソリューションを提示し、マーケティング視点での情報提供を進めている点が共通していると思います。また、編集長や仕掛け人といった“中の人”の声を伝えようとする工夫──こうしたスタンスにも、3社の取り組みが重なって見えました。
情報を届け、相談されるメディアへ―ADサイトの現在地
――それぞれのADサイトを、広告主や広告会社、マーケターにはどんな場として使ってもらいたいと考えていますか?
川崎
企業の課題解決を期待した問い合わせが、もっと増えるといいなと思っています。コラボ事例やホワイトペーパーなど、フックになるコンテンツを整えて、「まずは相談してみよう」と思ってもらえる場にしていきたいですね。
河村
より多くの方にもっと見てもらいたい。幼児向けからシニア世代まで、ファッション、ビューティ、ライフスタイル、コミックといった多様なジャンルで読者、ユーザーに深く突き刺さるメディアやコンテンツが出版社にはたくさんあります。ADサイトは、そうした多様な価値感に触れてもらう場として活用してもらえたら。
黒沢
新規の方にはメディアやコンテンツマーケティングの接点に、既存の広告会社の方には再発見を促す場になればと思います。「ナビゲーター」として、求められる情報が見やすく、探しやすく、使いやすいことも大切。今あらためて広告会社の皆さまにもご意見を伺っているところです。
川崎
広告主や広告会社にとっての「タッチポイント」として、出版社ならではの視点やコンテンツを届けていければ。あらためて、3社とも同じ方向を向いていることを実感しました。最適なソリューションの入り口を、それぞれの形で目指していければと思います。
日本の総広告費における雑誌広告のシェアはわずか1.5%(「2024年 日本の広告費」)。3社に共通していたのは危機感と「広告主・広告会社に、出版社のソリューションを選択肢として想起していただきたい」という思いでした。今回の鼎談ではそれぞれの取り組みや運営についても知ることができ、貴重な機会となりました。
ADNAVIでは集英社が持つメディアやコンテンツの価値を伝え、広告主・広告会社の皆さまの課題解決や提案のヒントになる情報を発信していきたいと考えています。ぜひご意見をお聞かせください。
*講談社Cステーション、小学館AD POCKETにも同じ鼎談記事が掲載されています。あわせてご覧ください。
講談社Cステーション https://cstation.kodansha.co.jp/article/14697
小学館AD POCKET https://adpocket.shogakukan.co.jp/adnews/14727/