「エクラ売れ」で分かった!
アラフィー世代への
アプローチ法
仕掛け人インタビュー第5回は、エクラ ブランド統括 兼 ウェブエクラ編集長を務める長内育子。アラフィーと呼ばれる50代女性を中心に「エクラ売れ」といった現象を巻き起こしたり、2020年には「LINE AWARD 女性誌部門」1位も獲得したりしています。マーケターや広告人も難しいと感じる中高年世代のアプローチ。その秘訣を聞いてみました。
長内育子:集英社にはバブルの終わり頃入社。『セブンティーン』、『LEE』、『コスモポリタン』を経て『MAQUIA』の創刊に携わる。2022年現在、エクラ ブランド統括 兼 ウェブエクラ編集長を務める。自身のビューティコラム「これ、いただくわ(https://eclat.hpplus.jp/chiefeditor_column)」に高い注目が集まっており、飼い猫・アランくんのInstagramにも8万人のフォロワーがいる。
– 売り切れ・指名買いが多発する、「エクラ売れ」とはどんな現象?
社内外で「エクラ売れ」という言葉を度々聞くようになって、私も嬉しく思っています。エクラに掲載されたものはとにかく動く!という評判から、そんな風に言っていただけるようになりました。
この売れ方、内側で見ているとわかる特徴があり、とくに「商品の指名買い」が顕著なんです。読者の皆様が「色違いでも型違いでもなく、掲載された商品と同じものがほしい!」と。最近では、あるタイアップ企画で新聞に掲載された服の問い合わせ電話が開始直後からずっとなり続けたということや、「どうしても同じものがほしいから地方の店舗からでも送ってほしい」といった依頼もあったと聞いています。
そんな売れ方をするので、編集側の私自身も見本誌の段階でいいなと思っていて、本誌が発売になってから買おうと思ったら、エクラ掲載カラーは人気でもう売り切れていた、なんてことも経験しました(笑)。
– 見る目の肥えた50代前後の年齢層へのアプローチ。その秘訣は…
エクラは50代前後(アラフィー)の方に多く読まれていますが、世代に関わらず読者はみなさん「美容やおしゃれに手を抜かず、その年代なりの美しさや楽しみを見つけたい」という意識をお持ちだと感じます。金銭的に余裕もあり、意欲もあるけれど「自分にとってどれがベストなのか」、迷われている方も多いかもしれません。
そんなエクラ世代の女性たちが求めているのは、「自分を、自分らしく輝かせてくれるもの」。ファッションを扱う雑誌ですからトレンドは意識しています。でも、そこにとどまらない「トレンド感のある服を着たら、私はどう変われるかしら?」という読者の期待に応える形こそが、今求められているのかなと。
だから、編集部では“モノだけが独り歩きしない表現”を重視しています。例えば服でもバッグでも「綺麗に見えるようにコーディネートして撮る」ということは、雑誌や広告ならばある意味できて当たり前。でも、モデルさんが完璧に着て綺麗に撮られたお洋服が、自分に似合うかどうかは別…なんてこともよくあるでしょう? エクラ世代ともなれば、そういうことはすでによくご存知。その方々に説得力をもって伝えなきゃいけないわけですから、「身につけた自分がどうなるのか」という一歩踏み込んだ表現が必要。写真もタイトルもです。
具体的なお話をすると、「週末旅行に出かけるなら」とか「女性同士のお出かけ」などのシチュエーションから連想させるファッションや、「大人の体を綺麗に見せる服」など、着用の目的と結果を読者がイメージ体験できる特集を大事にしています。
タイアップ企画でもイメージづくりに自信があります。とあるファッション小物は、商品自体の仕様は一切変わっていないのに、エクラのモデルさんが着用して、おしゃれなイメージで誌面とウェブで広告展開した結果、売り上げが何倍にも伸びたと聞いています。そのブランドさん自身が気づいていない魅力、バリュープロポジションを見つけてあげられるのも、エクラのスタッフの力と、独自のノウハウが生きているからと思うんです。
本誌で活躍するカバーモデル・富岡佳子さんの力も大きいです。彼女は、美しさはもちろんですが、一方でどこか親しみやすく、読者が「こうなりたい!」と思えるような雰囲気も表現してくれていますから。
また、「エクラ 華組」という読者モデルたちもライフスタイルやおしゃれをウェブで披露してくれて、「私も真似できそう!」というイメージ発信に何役も買ってくれています。
– エクラの読者は「5KO」。古い50代のイメージは刷新して。
ウェブエクラにブログを綴る読者モデル「エクラ 華組」や、100人の読者による「チームJマダム」もご覧いただきたいので、ぜひアクセスしてみてください。まず、昔の50代のイメージとは全然違います。本誌やウェブ記事を楽しみに読んでくれますし、SNSやブログを使いこなして、たくさん拡散や発信もしてくれています。コミュニケーション能力がとても高くて、お互いのおすすめのお店や美容方法なども、SNSを活用して共有されていますね。
私はエクラ読者の方々は「5KO」だなと思っているんです。それは、幸福感がある人、行動力がある人、購買力がある人、向上心のある人、そして、交際力のある人。よく見ると全部、言葉の最初に「こう(KO)」がついているでしょ?(笑)
– LINE AWARD(※)を女性誌部門1位も獲得!「使える」記事に注目が集まる。
※「LINEアカウントメディア プラットフォーム」に登録されているメディアをジャンルわけし、ユーザー満足度を独自の指標でランキング化し、特に高い支持を得たメディアが表彰されるアワード。エクラは女性部門で2020年に受賞。
LINEダイジェストでエクラの記事が人気になったのも、やっぱり上記のようなターゲット層を意識し、そこに刺さるリアルな情報発信をしていたのが大きいと思いますね。配信記事のタイトルは、編集長として毎回、こだわってチェックしています。SNSアプリだから気軽に読めるものを…とあえてせず、説得力があってじっくり読み込みたくなるものを流すようにしているので、結果、ウェブエクラの本記事のリンクまで飛んできてくれる方が多いですね。
– 長内編集長のような「社内インフルエンサー」はどのように生まれる?
「社内インフルエンサー」って作ろうとして作るのは難しいですよね。やっぱり担当者本人がいろんな情報を取り込んで、自分の目線で発信するには「場数」と「勘所を押さえるセンス」は必要だと思います。そして、そこについてくれているファンが誰なのか。マーケティングの基本ではあるのですけど、SNSとはいえ、対象者を意識して発信することは重要ですよね。
あとは発信の媒体。仕事ではなく趣味の話なのですが…。たとえばうちの猫・アランくんのInstagramには8万人のフォロワーがいますが、「面白い鳴き声」を出したときは「これはインスタよりTikTokだな」とか、コンテンツが一番生きる媒体がなんなのか自然と考えています。
私自身の日々の過ごし方としては、たとえ仕事ではなくても、いつの間にか「記事化する」ことを前提に物事を見ている気がします。読んだ本、観た映画などは、感想はもちろん、読みどころやおすすめポイントを探して、どういうことを書くと面白いのだろうと考えたり想像したりしています。頼まれてもいないのに。職業病かしら?(笑)
最近では、ウェブエクラで編集長コラム「これ、いただくわ」のコーナーを持っているんですけれど、写真もメイクも私自身がリアルに感じたことを生かしながら連載しています。「50代の肌を綺麗に見せる神色はこれ!」 とか「酷暑アイメイクの正解」とか。はじめてみて、大人の美容には顕在化されていないニーズがある、ということもわかりました。50代が自分でメイク実演しているものって案外少ないんです。勇気を出してやってみたからこそわかることもあるから、どんどん発信していくことは大事ですよね。
– 15周年を迎えたエクラ。アラフィーの「今」をさらに素敵に発信していきます。
エクラは2022年9月で創刊15周年を迎えました。50代だけでなく、ずっとファンでいてくれる上の世代の方もたくさんいらっしゃる。ここから先は年齢じゃありませんから。「ずっとエクラと一緒におしゃれも暮らしも楽しみましょう!」とお伝えしていきたいです。
今後は、華組やJマダムのような素敵な読者=アラフィーがいることをもっと多くの方に知ってもらうイベントができたらと思っているんです。エクラ本誌もウェブエクラもエクラプレミアム通販も。これからのエクラにご注目ください。
エクラの読者は、40代後半からのおしゃれも暮らしも生き方ももっと私らしく輝きたい「JAPANマダム=Jマダム」。日本の素敵な大人の女性に向け、ファッション、ビューティ、旅、グルメなど「手の届くラグジュアリー」情報を発信していきます。
購買意欲の高い優良顧客が特徴のエクラプレミアム通販も人気です。
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・第1回〈集英社 エディターズ・ラボ〉企業のファンづくりになぜ編集力が必要なのか。
・第2回「面白い」を形にする。WEB UOMO編集長の企画力の源泉。
・第3回 ファンを惹きつけてやまない 「ひとりっぷ」というコンテンツの秘密。
・第4回「漫画」のさらなる可能性を追求。『少年ジャンプ+』が目指すところ。