指名買いファンが続出!
今の時代に「紙」が人気の
雑誌Myojoの舞台裏。

仕掛け人インタビュー第9回は『Myojo』編集長 仲田知之。

終戦から7年後の1952年8月、『明星』(1952年10月号)は創刊されました。2022年には70周年を迎えています。長い間愛され続け、今なお“指名買い”ファンが続出する雑誌について、編集長にインタビュー。アイドルへの「リスペクト」が読者との信頼につながっていました。

仲田知之:1997年集英社に入社。『Myojo(明星)』編集部に配属後、2008年には『éclat(エクラ)』 に異動。2016年再び『Myojo』編集部に戻り、2020年に編集長に就任。創刊70周年を迎えた本誌をまとめています。

最新号のMyojo4月号(通常版)

その時代にフィットする「夢と希望の娯楽雑誌」の在り方。

『Myojo(明星)』は1952年に創刊し、「夢と希望の娯楽雑誌」というキャッチコピーでスタートしました。当初は映画俳優をメインに掲載し、その後、テレビの普及に伴ってアイドルなどの特集を組むようになります。現在はジャニーズのタレントたちが雑誌の中心となっています。

これだけ長く続いてきたことの理由のひとつは、『Myojo』が、時代にあわせて形を変えてきたからかもしれません。例えばファッション誌では長く続いても、テイストやターゲットの年代というのはある程度固定することが多いですよね。「ティーン女性向け」とか「40代男性向け」とか。でも『Myojo』の場合は、ターゲットが変化してきているんです。1950年代は、テレビの普及もまだだったので、映画俳優を多く掲載しており、家庭の中で、家族皆でシェアして読まれることも多かったようです。1980年以降の女性アイドル全盛期には若い世代の男性にも女性にも購入されるようになり、90年代以降は男性アイドルを中心とした誌面づくりを行い、10代の女性がメインの読者となってきました。

そして、令和になって「趣味に世代なんか関係ない」って感覚は強くなった気もしますよね。若い頃にマンガやアニメを好きになったら、大人になっても好きだし、子供のころからゲームをやりつづけている大人もいる。それがすごく肯定的に受け止められるようになったんじゃないでしょうか。その中で『Myojo』は、メインとなるターゲットは10代の女性と考えてはいますが、世代に関係なくアイドルを好きな人が買う専門誌だとも思っています。仮に入り口になる世代は10代だとしても、何歳になってもずっとアイドルを好きでいていいはずだし、忙しくて離れた時期があっても、戻ってくることもある。その時に一番輝いているアイドルを、時代にあった形で届けることが、ファンにとっての「夢と希望の娯楽雑誌」なのだと思います。

「主役をいかに引き立てるか」 編集として基本的なことを大事に。

そして、『Myojo』にとって一番重要なのは、アイドルありきということ。アイドルと応援するファンが居るから存在している雑誌です。だから編集部は特別な企画をしているというよりも、「裏方」としての仕事を徹底しているといった方が正しいと感じます。

アイドルに雑誌に出てもらうなら、「その人の魅力を最大限生かして発信する」ことこそ、僕ら編集の仕事なのです。本人のやり方や考え方を尊重して、相手に寄り添って作れているかどうか。案外普通のことに感じるかもしれないけれど、「撮影の場でストレスなく過ごしてもらうために環境を整える」とかね。70年も続けているだから、もちろん創刊当初から今まですべてのやり方を見てきた人は存在しないけれども、多分歴代の編集長も「当たり前のこと」を続けてきたと思います。

「推し活」文化も影響している!? アイドルとファンをつなぐ投票企画が好調。

長く続く企画といえば、「あなたが選ぶJr.大賞」が今年で29回目となりました。投票数が近年伸びていて、20万を超えるようになっています。とくにここ数年は、アイドルはもちろんアニメなどでも「推し活」が社会現象として取り上げられていて、勢いを感じます。投票によって「目に見える形でアイドルを応援できる」というのがファンにとってより価値あることになったのかもしれません。「あなたが選ぶJr.大賞」は、当初より部門が増えて今は50もあるんですが、やっぱり部門ごとに順位があがってくる子がそれぞれ異なるのが興味深いですよね。編集部もさまざまなメンバーのプロフィールを理解した上で誌面は作っていますが、ファンの投票によって新しい発見をすることもあります。

記事の空気感をファンも評価!『Myojo』の制作現場は…

ファンの方に「Myojoの空気感が好き」、「インタビュー記事は本人の言葉をそのまま聞いているみたい」といったありがたい声もよくいただきます。Webに情報が溢れる中で、紙の雑誌が価値を持ち続けるには、ファンがずっと「所持していたい」と思えるようなものでないといけない。記事や写真のクオリティには独自の工夫やこだわりがたくさんあります。

この「空気感」の背景にあるのは、撮影現場に入るメンバーとの信頼関係なのかなと思っています。いま『Myojo』に出てくれているジャニーズの方々は、皆さんほぼレギュラー出演。カメラマンやインタビュアー、編集担当は、ジャニーズJr.時代から、10年以上、取材し続けているケースもあります。それこそ小学校の頃から大人になるまで毎月顔を合わせている、なんてことも。取材相手のことを理解しているからこそ作れる現場の雰囲気、そこから撮れる自然な表情…それが「空気感」につながっているはず。雑誌は選び抜いた写真を使うのが当たり前だけれど、そこにプラスして『Myojo』スタッフにしかできない仕事があると信じています。

Myojo4月号の「ちっこい版」。表紙、ウラ表紙、ピンナップ、厚紙カードは通常版と写真、デザインが異なる

-Web全盛期に「持っていたい」と思わせるもの、それが雑誌。

Webや電子書籍が全盛期の中、『Myojo』は紙の雑誌を購入してくださる方が多いです。「10000字ロングインタビュー」や「Jr.大賞」といったMyojoならではの記事、上質な紙で制作する厚紙カードやピンナップ等の付録も根強い人気です。誌面はスマホやタブレットの画面で見ていただくより質感がありますし、お気に入りの写真をスクラップして持つ方も居ますから、雑誌にしかない「価値」があると思います。

情報の即時性という面ではWebに軍配があがるけれども、「コレクションしておきたい」という気持ちを満たすのはやはり形の残るモノ=雑誌。「推し活」がトレンドになる中で、「所持すること」の良さが見直されているとも言えるかも。とくにこういったジャンルの雑誌は、紙の需要が高い。僕達も、「紙媒体」ならではの企画がもっとあるのではないかと、付録の案なども随時考えています。

これからも人の気持ちを明るくする雑誌を届けます。

読んでいただいた通り、『Myojo』編集部のマインドは常に「アイドルありき」です。そしてこれからもアイドルと、ファンの皆様に寄り添った誌面を作ります。「夢と希望の娯楽雑誌」として、読んでくれた人が楽しく、明るい気持ちになれるような雑誌をお届けできればと思っています。

イラスト/ますっく


Myojo公式サイトはこちら>

 

・第1回〈集英社 エディターズ・ラボ〉企業のファンづくりになぜ編集力が必要なのか。
・第2回「面白い」を形にする。WEB UOMO編集長の企画力の源泉。
・第3回 ファンを惹きつけてやまない 「ひとりっぷ」というコンテンツの秘密。
・第4回「漫画」のさらなる可能性を追求。『少年ジャンプ+』が目指すところ。
・第5回「エクラ売れ」で分かった!アラフィー世代へのアプローチ法
・第6回 non-no web編集長が考えるZ世代の「流行」の捉え方
・第7回 進化し続けるLEEのファンコミュニティ「LEE100人隊」のパワーとは?
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